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2005/05/12

トマトソースパスタ:アマトリチャーナ

amatriciana3

パスタレシピ:トマトソース系
パスタ:スパゲッティ

5/12(木)
トマトソースパスタ:アマトリチャーナ

自己評価:★★★★★
手軽度合:★★★★☆
家族評価:★★★★★








ジュッ…。

鍋肌に注がれた白ワインは、一瞬音を立て、やがて静かに沸騰し始めた。
アルコールと水蒸気の上昇気流に乗って、オリーブオイル、にんにく、肉汁の香りが立ち上る。

男は胸いっぱいに吸い込むと、
「あと30分だな」
とつぶやいた。暗い雨の夜を忘れるまでのカウントダウンだ。






五月晴れの空の色を忘れてしまいそうな、どんよりとしたグレーの午後、
男は経済白書を見つめながら、いったい日本人はアメリカ人の何倍生命保険をかけているのか計算していた。

Enterキーを押し、その値を確認する。
「やはり…。」

予想通りの値に満足しながらも、重い空気から逃れることはなかった。
冷静に左脳を働かせながらも、五感は別のものを求めていた。


「アマトリチャーナか…。」





打ち合わせを終えて帰宅した彼は、ネクタイを引き剥がすと、暴れまわるわが子を妻に押し付け、手を洗いながら頭の中で次の表を描いた。



▼アマトリチャーナ3人分の材料

パスタ…ラティーニ スパゲッティ1.95mm 300g
にんにく…3~4片
唐辛子…1本
ホールトマト…1缶(予め手でつぶし、皮や芯を除いておく)
パンチェッタ…150g
*パンチェッタは、イタリアの豚バラの塩漬け。見た目はベーコンに似ているが、むしろ生ハムに近い。ハーブが刷り込まれている。
たまねぎ…1個
パルミジャーノ・レッジャーノ…大さじ4~5
白ワイン…1/2カップ
オリーブオイル…適量
バジル…適量



そしてキッチンに立つと、慣れた手つきで、ベキッっと包丁の腹でにんにくをつぶして皮を除き、フライパンにオリーブオイルを入れ、にんにくを浸した。

ダダダダッと包丁でたまねぎをスライスする。繊維に対し垂直に切られたたまねぎは、平行に切った時よりうまみが出やすい。甘みを堪能するつもりらしい。

そして、パンチェッタを5mm角に刻む。寸分違わぬ正確さからは、男のパスタに対する姿勢をうかがい知ることができる。
最後に、唐辛子を半分に折り、中の種を出すと、男はパンをゆっくり加熱しはじめた。

オリーブオイルとにんにくの香りが立つ。アドレナリンが分泌されるのを感じながら、パンチェッタを入れる。
軽く焼き色をつけながら、脂を溶かす。その過程で、たまねぎを加え、じっくり火を通していく。

しばらくすると、男はコルクを引き抜き、フライパンの様子を確かめた。



ジュッ…。

鍋肌に注がれた白ワインは、一瞬音を立て、やがて静かに沸騰し始めた。
アルコールと水蒸気の上昇気流に乗って、オリーブオイル、にんにく、肉汁の香りが立ち上る。

男は胸いっぱいに吸い込むと、
「あと30分だな」
とつぶやいた。暗い雨の夜を忘れるまでのカウントダウンだ。





ボールにいっぱいのトマトは、フライパンを鮮やかな紅に染める。
そして、火力を強め、パンはいよいよ力強く沸騰し始めた。

やがて中火に落とし、煮詰める準備が整うと、鍋に3Lもの水を入れ、沸かし始めた。
沸騰するまで15分、パスタを茹でる7分。計算高い男は、トマトが濃厚なうまみを生み出す時間を、となりのコンロで計っているようだ。



赤かったフライパンのソースは、しばらくするとオレンジ色に染まり、灰汁が浮く。しかし、この灰汁にはうまみしか含まれていないことを体感しているので、取り除くことはしない。



湯が沸騰した。
人には、「パスタ100g・水1L・塩10gがベストの比率だ…。」と言うが、自分自身はいちいち測らない。スプーンで塩をすくい、いつも通りに湯に入れ、味見をする。吸い物の濃さを確認したら、パスタを手に取る。



普段バリラを使用するが、今日は素材へのこだわりを強く感じているらしい。
ルスティケーラ・ダブルッツォとラティーニを手に取ると、赤いパッケージを開いた。300gの分量は右手が知っている。素早く1.95mmの太めのスパゲッティを握り、両手で束をねじると、沸騰する鍋の中心に束を突き刺し、手を放した。

バッっと音を立て、スパゲッティは放射状に広がる。

軽く菜ばしで沈めると、水面が少しボコっとする程度に火力を調節した。
そして、数分間ほとんど触ることなく様子を見た。、ボコボコ沸騰させたり、執拗に菜ばしでかき混ぜると、表面が溶けて、パスタの表面についているキズが埋まってしまう。これでは、ソースとの絡み具合が悪くなる。



この数分の間に、レタスとフレッシュトマトを切り、フランスパンの切り口に、にんにくを消しゴムのようになすりつけ、香りを移した。どうやらサイドディッシュをつくるらしい。

そして、パルミジャーノ・レッジャーノの塊を削った。小皿には、砂時計のように、薫り高いチーズが舞い降りる。



やがて、鍋はパスタの小麦が溶けて、うっすら白くにごり始めた。
男は茹で汁をレードル1杯分すくうと、トマトソースに加え、フライパンをゆすり始めた。煮詰められたトマトソースは、濃縮された風味を残しながら、小麦の混じる茹で汁と調和しはじめ、とろみを感じるに至った。





男は鍋のパスタを一本口に運び、噛み締めた。少し芯が残っている。
数十秒後、火を止めると、パスタを引き上げ、すぐにトマトソースのフライパンに入れ、さっと絡ませると、Ex.ヴァージン・オリーブオイルとパルミジャーノ・レッジャーノをかけ、よく混ぜて皿に盛った。








テーブルに家族を招き、妻子が料理を口にするのを確認すると、彼もフォークを手に取った。

オリーブオイルの香りを感じながら口に運ぶと、洗練された甘みと酸味がほほの内側を包み込む。それは濃縮されたトマト、ワイン、たまねぎ、肉汁、パルミジャーノ・レッジャーノが織り成す和音。
そして噛み締めると、パンチェッタの肉汁がこぼれ、ハーブの香りが加わる。アルデンテに仕上げられたパスタは、心地よい弾力を歯とあごに伝える。

やがて、小麦のうまさが舌をなで、オリーブオイルの滑らかな感触に包まれながら、のどを通ってゆく。





ふと見上げると、妻が微笑んでいた。今日はじめて見る笑顔かもしれない。
そして、「おいしぃねぇ、パパ。」と、ほころぶ我が子を見て、男は、トマトソースの赤い暖かさが、彼の家族を包み込む幸福を感じているのだった。








人気ランキング投票。

~ FINE ~

出演:俺 嫁 息子(2歳)
ロケ地:横浜


後日談:この日は友達と作家ごっこをやってて、互いにブログで見せ合ったのでした。お互い、実に駄文だった。ごめんなさい。

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コメント

はじめまして。
どのパスタもおいしそうで、
私も挑戦してみよっかなと。
ついつい、ありふれたものしか作らなかったので・・・

本格的なパスタなのに、
材料から細かい手順まで書いてあるなんて
感激です!!
ちょくちょくチェックしにきまーす!

投稿: もんち | 2005/05/13 12:31

>もんちさん
僕も修行中の身なので、細かく手順を書いて自分自身の考えを整理しています。
ご参考になるようでしたら幸いです。

投稿: | 2005/05/15 00:00

面白かった
(*゚▽゚ノノ゙☆ぱちぱち

投稿: yukiho | 2005/05/17 08:07

今日は未だに上手く仕上げられないパスタに再挑戦しようと想いたち、ネットで参考レシピを検索していました。

『トマトソースパスタ:アマトリチャーナ』の小説風記事。素敵です。素敵過ぎです。

こんな風に自分もブログを描き始めようか、とも。美味しいレシピと創作意欲に対する刺激を与えて下さった事、感謝感謝です。

投稿: 靖和圭忠 | 2005/05/19 16:32

詩人のyukihoさんと映画プロデューサーの靖和さんから、お褒めのお言葉を頂戴しましたが、当の本人は出来心でやっちまったので、当面小説型は禁止の方向でして…。

投稿: パスタ担当 | 2005/05/20 00:25

はじめまして!パスタ暦4日のuwtbです。
四日前からカウンターを不当に回してます!この4日でカルボ、カルボ、ペペロンチーノそしてアマトリチャーナとつくりまくっとります。レシピがとっても見やすいもんで、自分には才能があるのではないか?と錯覚してします。こっそりレシピを盗み続けていたんですが、今日作ったのがあんまうまかったんで投稿しちゃいました。これからも勉強させていただきます!
あと一個質問ですが、白ワインてどのようなの使いますか?貧乏学生にも手が届くものを教えてください!

投稿: uwtb | 2005/06/15 00:03

>uwtbさん

こんにちは。白ワインは安いもので十分と思いますよ。個人的には、少し辛口のものを選んでます。
これからも宜しくお願いします。

投稿: パスタ担当 | 2005/06/15 01:30

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ご来訪お待ちしております。

投稿: 医療保険・がん保険 | 2007/11/09 11:55

この小説形式のレシピ最高です。
一人で腹筋を固くして最後まで楽しませてもらいました。

こんなに楽しいレシピは始めてです。

禁止とは言わずにまたお願いします☆

投稿: | 2010/01/06 21:36

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