2005/12/23

基本ワザ:にんにくの使い方

にんにくは、パスタに欠かせない食材です。
だからこそ、基本的な使い方をマスターしたいものですが、これが結構難しい。

僕があまりレシピ本の類を読まないので知らないだけかもしれませんが、
詳しく解説された本が見つからないし、料理人によって解釈も異なると思います。

そこで、これまでいろいろ試行錯誤した結果、僕は次に述べるような使い方を、現段階の結論としています。
あくまでアマチュアの僕個人の考えですので、間違いがあるかもしれません。その際は、お知らせいただけると助かります。




にんにくの選び方・保存について

まず、イタリア産のにんにくを入手することは困難を極めますので、国産品を使って下さい。青森産が有名で入手しやすく、オススメです。

1個100円~500円位すると思いますが、できる限り高いものを選びたいですね。

流通している中国産は、安全面はもちろん(時々薬品臭のきついものもありますね)、香りも味も悪く、身がスカスカで、粒が小さく、パスタには不向きです。


選ぶポイントを列挙しますと、

○ 白くて張りがある
× 黄色くなって、皮に張りがない(古い)
○ 形が良くて硬く、重みがある
× 先が割れていたり、やわらかくて軽い(水分が抜けている)
× 芽が出ている(芽に養分を摂られている)

こんな感じですね。

保存は、なるべく風通しが良くて涼しく、光の当たらない場所がいい。
夏場などは、冷蔵庫の野菜室がいいと思います。

生ものですから、早く使い切るようにしましょう。ほっとくと芽が出て皮が黄色くなってきます。こうなると、味も香りも劣化します。





にんにくの性質


にんにくに含まれるアリインという成分は、切ったりつぶしたりすると、酵素と反応してアリシンという成分に変化します。このアリシンが、にんにく独特の刺激臭を出します。刺激臭は加熱すると弱まります。

また、アリシンはオリーブオイルなど油に溶けやすい性質を持ちます。


従いまして、

▼切り方
丸ごと → つぶす → 繊維に対し水平に切る 
 → 繊維に対し垂直に切る → みじん切り → すりおろす

▼焼き色
きつね色 → 半生 → 生

の順に刺激臭は、マイルド→ハードになります。

すりおろしたり、生のままというのは、ジェノバペーストをつくるなど一部を除くと、パスタではあまり使われません。

逆に、つぶしたり切ったりしてオリーブオイルに浸して加熱し、オイルやソースに香りを移すという工程は、ほとんどのパスタレシピで登場します。

その際、毎回毎回書いていますが、フライパンにオリーブオイルを入れてにんにくを浸してから、加熱です。
高温のオリーブオイルににんにくを入れるより、この方がオリーブオイルに香りが移りやすいからです。

また、オリーブオイルも温度が高くなると香りが薄れますが、常温からにんにくを入れることで、にんにくの状態センサーになって、過熱を防ぎやすくなります。

オリーブオイルだけを加熱しながら他の作業をしていると、いつの間にか温度が高くなって、煙で気がつくことがあります。こうなったら、一からやり直しです。
でも、オリーブオイルににんにくを浸してから加熱すれば、にんにくの音や香りで、過熱に気づきます。

とは言え、オリーブオイルもにんにくも繊細ですので、加熱したら目と手を離さず、集中するようにしましょう。







にんにくの使い方

では、にんにくの使い方です。






1.つぶす



僕が一番多用するのは、この「つぶす」です。きつね色に火を通し、ほんのりとしたにんにくの香りと香ばしさを、オイルに移します。

aglio0つぶす場合は、皮ごとつぶします。
つぶしてから皮を剥いた方が簡単だからです。

また、大粒のものは、皮を剥いてからつぶそうとすると、結構すべって危ないので、皮ごとつぶした方が安全ですね。


aglio1まず、付け根の硬い部分を切り取り、包丁の腹などで押しつぶします。

つぶしたら、皮を剥きます。





aglio2皮を剥いたら、中の芯を取り除くために割ります。

芯は身より焦げやすく、苦味の原因となります。






aglio3芯を取り除きます。
また、芯の周囲に薄皮がありますので、それも取り除きます。

通常はこれでOKです。




aglio4大粒のものは、このようにカットしてもいいでしょう。






aglio9カットしたら、まずはじめにフライパンにオリーブオイルを入れてにんにくを浸し、オイルになじませたら、中火~弱火を入れてゆっくり温めます。
シュワーっと泡だってきたら、フライパンを少し傾けます。にんにくがフライパンの底に接していると、そこが焦げてしまいますが、こうすることで焦げずに、均一に火を通すことが出来ます。








あまり高温にならないように気をつけながら、にんにくの表面がきつね色になったらOKです。

ソースやレシピによりますが、にんにくは具と一緒に炒めたら、フライパンから取り除きます。
取り除いたにんにくは、お好きな方はそのまま食べたり、パスタにトッピングして下さい。






2.スライス



個人的に、パスタでにんにくをスライスする機会は、あまりありません。
逆に、肉や魚をソテーする場合は、スライスしたにんにくが肉・魚に香りを付けやすいと思います。

また、カリッと仕上がったにんにくチップは、いろんな料理のトッピングに使えます。


aglio8スライスする場合は、繊維に対して垂直方向に。真ん中の芯は取り除きます。












3.みじん切り





みじん切りは、色々な用途があります。

まず、オイルベース系レシピで多用するパターン。


aglio5にんにくをつぶして皮・芯を取り除き、みじん切りにします。






aglio6フライパンにオリーブオイルを入れて、みじん切りにしたにんにくを浸し、なじんだところで弱火にかけます。
ポイントは半生に仕上げること。きつね色になるまで火を通すシェフもいますが、個人的には半生にんにくの強い香りを楽しんでいます。




aglio7半生にする場合、にんにくの周囲が泡立ったら、それ以上温度を高くしないように気をつけます。
おおむね75℃になります。

ちなみに温度計は、この記事のために買いました。












ここでパスタの茹で汁を加えて乳化させると、オイルベース系ソースの基本形が完成します。


次に、にんにくオリーブオイル。
パスタの仕上げには、Ex.ヴァージン・オリーブオイルをかけてよく混ぜる工程があります。ここで、にんにくオリーブオイルを使うと、にんにくの香りが効いた仕上がりになります。



作り方は至極簡単で、みじん切りにしたにんにくを、Ex.ヴァージン・オリーブオイルに漬けるだけ。
しばらくすると、にんにくの香りがオリーブオイルに移りますので、上澄んだオイルを使うか、目の細かい網などでこして使います。

長持ちしませんので、できれば1日で使い切りましょう。


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にんにくに関する基本は以上です。

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2005/12/18

基本ワザ:フライパンを振る

パスタの仕上げはスピード勝負になります。

アルデンテ一歩手前に茹でたパスタをソースに絡めますが、手早く絡めないとパスタに熱が通り過ぎてしまい、アルデンテの食感を損ないます。

かなり硬めに茹でて、ゆっくり絡めれば、少なくともアルデンテを通過してしまうよりマシですが、冷めてしまいますので、やっぱりフライパンを振って、ジャッジャッと手早く絡めたいものです。





ところが、この「フライパンを振る」という動作について、よく質問・相談を受けます。

「うまくできないので、コツを教えてください。」
「豪快に振ると飛び出てしまい、それが恐くて出来ません。」

また、料理番組等で、プロの料理人のフライパンを振る姿を見て、自分でもやってみたい、という方も結構いますね。とくに男性。




そこで、フライパンの振り方について、記事にしてみました。
普段料理をする方にとっては、当たり前の行為ですが、教えるとなると話は別です。口では説明しにくいですからね。


とくに女性の方は、教え方を知ってると重宝します。上述の通り、男性にはフライパンを振ると言う行為に、潜在的な需要があります。フライパンの振り方を教えれば、料理がしたくなります。
家事好きな夫・彼氏のできあがり。


それでは教え方です。

まず、「料理人の技は、習うより慣れろ、です。」と、それらしい事をはっきり言います。

次に、「そのためには訓練が必要ですが、いきなり実戦で試すと、キッチンや食材が大変なことになりますので、とっておきのトレーニング方法を伝授します。」と、トレーニングを前提にしてしまいます。


「1年間、毎日料理をしていてもフライパンを振ることが出来ない人はたくさんいますが、このトレーニング方法なら、たった10分の練習で、あなたも自由自在にフライパンを振ることが出来るようになります。」



これで、相手のやる気を引き出すことが出来ます。TVショッピングをイメージして下さい。




では、トレーニング方法です。

聞いた話によりますと、中華の料理人は、鍋に塩を入れて練習するそうです。
でも、塩が飛び出してしまうと、片付けは悲惨です。失敗したときのことを思うと、フライパンに塩を入れて振ってみるなんて、萎えてしまいます。









pan-trainingそこで、このたび僕が開発した、ショートパスタを使ったフライパントレーニング方法を紹介します。

そう、ショートパスタなら、飛び出したって、手で拾えばOK。ダイニングテーブルの上で練習すれば、こぼれたショートパスタも汚れませんから、無駄になりません。

使うショートパスタは何でもいいのですが、フジッリ・エリケ・ファルファッレなどひらひらしたものは、角が欠けてしまいがちなので、ペンネやリガトーニなどシンプルな形のものがいいでしょう。


まず、フライパンにショートパスタを入れます。茹でる必要はありません。
はじめは少量にして、慣れたら次第に増やして下さい。

振り方は、まっすぐ上に振るのではなく、少し0の字のように放物線を描くような気持ちで振ります。






…。言葉では難しいので、動画にしました。


ショートパスタを使ったフライパントレーニング wmv/360KB/6秒

あまり重いと見られない方もいらっしゃるでしょうから、数秒の動画に編集しましたが、雰囲気は伝わると思いますのでご参考下さい。

動画では、状態を確認しやすいように、一度振ってから一呼吸置いていますが、実際は連続してジャッジャッと振ります。

動画と同じように出来るようになったら卒業です。あとは、パスタをはじめ、いろんな料理で・いろんなフライパンや鍋で試して下さい。




慣れれば、動画のようなレベルは、目隠ししても出来るようになります。
実際、これを撮影した時は、デジカメの液晶画面を通して2次元になったもの見ながら振りましたが、肉眼で見ながら振るのとは全く環境が異なります。面白いから、目をつむって100スイングしましたが、1個もこぼさずに出来ました。


練習が終わったら、パスタは袋に戻しますが、勢いでそのまま料理したくなりますね。


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2005/08/06

基本ワザ:茹で汁と乳化

パスタの茹で汁は、ソースをおいしく仕上げるために、とても大切です。

なぜ茹で汁を加えるのか、理由は3つです。

1.ソースに塩味を加えるため
2.ソースにパスタのうまみを加えるため
3.ソースを乳化させて、滑らかに・ジューシーに仕上げるため


それぞれ解説します。




1.ソースに塩味を加えるため

パスタのソースは、茹で汁で塩味をつけます。もちろん、ソースによっては、直接塩を加えたり、アンチョビやパンチェッタなど塩分を含む食材からも塩が出ますが、茹で汁を加えることで、塩が均一にソースに行き渡ります。

とくにオイルベースのソースの場合、茹で汁はとても重要になります。なぜなら、オイルに塩が溶けないからです。

nyuuka-oilandsalt

画像は、オリーブオイルに塩を入れ、ぐるぐるかき混ぜたものです。
ご覧の通り、塩はオイルに溶けません。これは、常温でも加熱した状態でも同じです。

正確に言えば、かすかに塩味がつきますが、これはオイルに溶けたのではなく、オイルの中を塩の結晶が浮遊しているに過ぎません。しばらく放置すると沈殿し、塩味はしなくなります。







2.ソースにパスタのうまみを加えるため

茹で汁には、パスタから溶け出した小麦のうまみが含まれています。
これをソースに加えることで、ソースのうまみが深まります。

ただし、だからと言って、パスタを茹でる時に、必要以上にかき混ぜて、小麦を溶かそうとしてはダメです。
パスタの表面には、うっすらキズがついています。これは、ソースと絡みやすくするため、わざとキズをつけているのです。

ボコボコ沸騰させたり、ぐるぐるかき混ぜてしまうと、パスタの表面のキズが埋まってしまい、ソースに絡みにくくなってしまいますので、ご注意下さい。

尚、ショートパスタはくっつきやすいので、ロングパスタより混ぜながら茹でる必要があります。





3.ソースを乳化させて、滑らかに・ジューシーに仕上げるため

最後は乳化です。

例えば、水と油はかき混ぜると、一時的に混ざるものの、すぐ元に戻ってしまいます。ところが、石鹸を加えてかき混ぜると、白く濁って混ざります。この現象が乳化で、石鹸など混ぜるために必要なものを乳化剤とか界面活性剤、混ぜることを攪拌(かくはん)と言います。

乳化の説明には、水+油+石鹸がよく使われますが、その他、牛乳、マヨネーズ、バター、ドレッシングなど、身の回りに乳化したものをたくさん見つけることができます。

パスタでは、とくにオイルベースの場合、オリーブオイルと茹で汁が混じり合って乳化することは、とても大切になります。

乳化していないと、油っぽくなったり、逆にパサパサしたりしてしまいます。
オイルベースと言っても、オイルまみれではダメです。

乳化したオイルソースは、滑らかでジューシーで、とてもおいしく仕上がります。
乳化はそれほど難しくないので、ぜひ体得しましょう。

nyuuka1

オリーブオイルに水を入れた状態。
まさに、水と油の状態です。






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フライパンをゆすって攪拌(かくはん)させました。
水の塊が小さくなりましたが、混ざるには至りません。




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次に、塩水とオリーブオイルを混ぜました。
やはり、混ざりません。





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最後に、茹で汁とオリーブオイルです。
フライパンをゆすって攪拌(かくはん)します。





nyuuka
しばらくすると、オリーブオイルと茹で汁が混じり合いました。乳化です。
尚、このケースでは加熱しませんでした。加熱しなくても、十分乳化します。






この場合、パスタから溶け出したグルテンなどのタンパク質やでんぷんが乳化剤となっているのでしょうか。
いずれにせよ、茹で汁を使えば、塩味が効いて、小麦のうまみが加わり、オリーブオイルと乳化して、とてもおいしいソースに仕上がります。

特に、オイルベースのソースや、カルボナーラでパンチェッタの脂と茹で汁を乳化させる場合などは意識して行います。


ranking04参考になったら、投票して下さい。

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